お疲れ様です。今回は『小麦を摂らない食事法「グルテンフリー」にダイエット効果はあるのか?』についてお伝えします。
テニスプレイヤーのジョコビッチを復活させた究極の食事法?
2015年に、「ジョコビッチの生まれ変わる食事」という本がベストセラーになりました。
著者は世界屈指のテニスプレイヤーであるノバク・ジョコビッチ。激しいスランプに悩んでいた彼が医師の勧めに従って食事を変えたところ、体の不調が嘘のように改善し、再びトッププレイヤーに返り咲くまでの様子を描いた健康本です。
ここで有名になったのが、「グルテンフリー」なる食事法です。グルテンは小麦などに含まれるタンパク質の一種で、セリアック病という自己免疫疾患を持つ人が口にすると、慢性の疲労や下痢などの症状を引き起こすことで知られています。
グルテンフリー食とは、その名の通り、グルテンを一切食べない食事法のことです。小麦は全てNGなので、パンやパスタ、ラーメン、うどん、ピザ、ビールなどは口にできません。
実に厳しい食事法ですが、実践した人からは「疲れにくくなった」「肌がきれいになった」「体重が落ちた」といった感想が続出。いまでは一般人の間でも最先端の食事法として人気を広げています。
一流アスリートが実践したと聞けばいかにも真実味がありそうですが、実際はどこまで証拠にもとづいているのでしょうか?
グルテンは逆に体にいいこともあり、痩せる効果や中性脂肪の減少にも
現時点で、グルテンフリーダイエットには2つの問題点があります。
- グルテンフリーは逆に体に良いこともある
- 「真の悪玉はグルテンではない」可能性も高い
一つ目のポイントは、グルテンアレルギーがない一般人には、まだグルテンフリーのメリットが確認されていない点です。
例えば、「グルテンフリー食で体重が減った」との報告が出ているのは、いまのところセリアック病の患者を対象にした実験のみ。それも実験によって結果はバラバラで、逆にグルテンフリーによって体重が増加したとの結果すら出ています。
Gluten-Free-Diet-Imprudent-Dietary-Advice-for-the-General-Population.pdf (researchgate.net)
とりあえず、グルテンフリーのダイエット効果については疑ってかかるべきでしょう。
また、ダイエット以外の健康効果についても、データによって大きな食い違いが見られます。グルテンアレルギーの人が実践した場合は別として、「グルテンは体にいい」とする報告も意外と多いのです。
具体的には、ある実験では、太り気味の男女24人がグルテンを増やす生活を2週間続けたところ、中性脂肪が13%も減りました。
標準的なコレステロール低下食に植物性タンパク質(大豆)と水溶性食物繊維を添加した複合効果 – ScienceDirect
別の実験では、参加者に1日75gのグルテンを1か月ほど食べさせた結果、やはり中性脂肪が19%減り、ついでに悪玉コレステロールが10.6%下がったそうです。
血清脂質と結腸機能に対する超高繊維野菜、果物、ナッツ食の影響 – 代謝 – 臨床および実験的 (metabolismjournal.com)
これらのデータを見る限り、必ずしもグルテンを止めるのが良いとは言えなさそうです。
実はグルテンは悪者ではなかった?食物繊維が原因?
しかし、いくらグルテンは悪くないと言っても、グルテンフリーで体調が良くなったという人が多いのも事実。そのすべてが単なる思い込みだとも考えられません。
そこで、「グルテン悪玉説」の代わりに、近年になって有力視されるようになったのが、「真の原因は食物繊維だ」という考え方です。
食物繊維といえば体にいいイメージが強いですが、実は一部の人には害が出ることが昔から知られていました。というのも、食物繊維は腸内で消化されにくい性質を持っているからです。
もちろん、健康な人が食物繊維を摂った場合は、消化されない成分は腸の中で善玉菌のエサになったり、便通を良くしたりなどして、健康の維持に役立ってくれます。
ところが、日頃の不摂生で腸内環境が悪化していると、逆に食物繊維が刺激物として働くため、粘膜に傷をつけたりガスを発生させたりといった悪影響をもたらすことがあるのです。食物繊維といえど、常に善玉ではないわけですね。
この説を確かめたのが、2017年にノルウェーのオスロ大学が発表した論文です。
非セリアック病グルテン過敏症 – ギブソン – 2017 – Journal of Gastroenterology and Hepatology – Wiley Online Library
研究チームは、「セリアック病ではないのに、なぜかグルテンフリー食で体調がよくなる人」だけを集め、3パターンの食事を1週間ずつ行うように指示しました。
- グルテンが入った固形食を食べる
- フルクタンが入った固形食を食べる
- グルテンとフルクタンが入っていない固形食を食べる
フルクタンは、食物繊維の一種です。玉ねぎなどに豊富な成分で、「イヌリン」や「フラクトオリゴ糖」といった名前でサプリメントも販売されています。研究チームは、このフラクタンこそが真の悪玉ではないかと考えたのです。
結果は予想通りでした。全ての参加者は、グルテンだけの固形食を食べても異変が起きなかったのに、フルクタンを口にした場合は15%腸内にガスが発生したと言います。
ここでのポイントは、グルテンフリー食を徹底すれば自然とフルクタンが少ない食事になるところでしょう。グルテンが豊富な食品には、同時にフルクタンも含まれるケースが多いからです。
つまり、グルテンフリーで体調が良くなったように感じたのは、実際にはフルクタンが減ったからではないか、というわけです。
もちろん、このデータだけでハッキリした結論は出せませんが、グルテンが悪いという証拠がないのも確かです。更に、一般的なグルテンフリー食には、食物繊維の不足や飽和脂肪酸の過剰といった問題もあるため、逆に体調が悪化することも十分に考えられます。是非、参考にしてください。
今回の内容は以上になります。ご閲覧ありがとうございました。