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ギャンブルなどの「役に立たない報酬の予感」を減らし、「報酬の予感」を自己管理する

お疲れ様です。今回は「ギャンブルなどの「役に立たない報酬の予感」を減らし、「報酬の予感」を自己管理する」についてお伝えします。

人類の歴史を混乱させてきたサイコロ、トランプ、レアアイテム、ギャンブル

2011年、20歳のイギリス人男性がコンピューターゲームのプレイ中に意識を失い、そのまま命を落としました。

セーブデータの記録によれば、男性のプレイタイムは12時間超。長い間同じ姿勢でゲームを続けたせいで体内の水分が減り、固まった血液が心臓から肺脈動に詰まった結果のショック死でした。

近年では似たような死亡事故が増え続けており、2002年にはオンラインゲームを86時間プレイし続けた韓国人の男性が死亡。2015年のロシアでも22日間休まずゲームをし続けた少年が突然死しています。いずれの事例でも、プレイヤーは食事とトイレ以外はほぼ体を動かしておらず、下半身のうっ血で死に至ったようです。

事態を重くみたWHOは2019年に「ゲーム障害」なる疾病分類を発表し、日常の行動に障害をきたすレベルのプレイは病気の一種なのだと認めました。この決定には反論も少なくないものの、いまや各国機関が対応に追われている状況です。

この問題について考えるために、人類が娯楽の発達に傾けてきた情熱の歴史を見てみましょう。一番分かりやすいのは、ギャンブルです。

ギャンブルの歴史は古く、古代ローマではカリグラやネロなどの皇帝が日ごとサイコロ遊びに興じ、そのせいで行政が止まったとの記録が残されています。更に16世紀のイギリスではポーカーや競馬が流行り過ぎたせいで、週末にしかギャンブルを楽しんではならないという法律まで作られたほどです。

ギャンブルの魔力に目をつけたカジノ経営者たちは、主に1960年代からのアメリカで、人間の反応を引き出すための手法を磨き上げました。

煌びやかなネオンで外観を彩って注意を引く。窓と時計を撤去して現実から切り離す。派手な音楽と照明で気持ちを駆り立てる。無料のアルコールで脳の働きを狂わせる。たまに大当たりを出して希望を煽る…。

カジノに実装されたテクニックは全て、脳が暴走するように設計されています。本来は人間の生命を保つために生まれた脳のパワーを、ただ刺激に反応して金を落とすだけの操り人形に変えてしまう巨大なシステムです。

そして、カジノの中毒性を更に身近にしたのが現代のゲームです。

レベルアップの魅力が架空の達成感を煽り、ランダムに現れるレアアイテムはプレイヤーの期待を高め、イベントのクリアボーナスがさらなるモチベーションをかき立てる。なかでも近年のソーシャルゲームにおける課金の仕組みは、カジノで最も収益率が高いスロットマシンの仕組みそのものです。

教育学者のウィリアム・バッグリーは、19世紀の初頭に著した「教育の技巧」のなかで、集中力を妨げやすいものの代表例として「おもしろい小説」や「楽しい友達」を挙げました。それから100年で、人類はだいぶ遠くへ来たようです。

ゲームは脳を気持ちよくさせる最強のテクノロジー

ゲームがここまでの魅力を持ち得たのは、クリエイターたちが「報酬をいかに提示するか?」の問題を徹底的に掘り下げたからです。

世の中に「ご褒美」が嫌いな人間は少ないでしょう。昇進で給料が上がったり、人事評価で良い言葉をもらったり、趣味のイベントで賞を受けたりと、自分の行動が報われるのはなんでも嬉しいものです。

しかし、カジノが進化する過程でクリエイターたちが行きついた最大の結論は、「本当に大事なのは報酬そのものではない」ということでした。

考えるまでもなく、胴元がいるギャンブルほど不合理な行動はありません。

カジノ、競馬、パチンコ、宝くじなど、大半のギャンブルでは期待値がマイナスになります。短期的には大当たりを引くことがあっても、最後には大数の法則が働くため、ほとんどのプレイヤーは敗北します。

それでもギャンブルにのめり込む人が後を絶たないのは、報酬それ自体に魅力があるからではなく、「報酬の出し方」が上手いからに他なりません。スロットマシンがプレイヤーを虜にする手法はいくつもありますが、最も影響が大きいのは「ニアミス演出」と「スピード感」の2つです。

ニアミス演出は、プレイヤーに「あと少しで絵柄が揃うところだった!」と思わせ、モチベーションを引き出す手法です。スリーセブンまであと一歩のところで3枚目の7が出ない現象は、ギャンブラーならおなじみでしょう。

その効果には多くの実証データがあり、ニアミスの発生率を高く設定したマシンを使うと、一人当たりのプレイ時間は10~20%ほど延びます。ギャンブラーを対象にした実験によれば、ニアミス演出を目撃したプレイヤーの脳は、大当たりを引いた勝者とほぼ同じレベルの興奮度を示したそうです。

報酬の予感を自己の管理下に置けるかどうかが最大のポイント

もうひとつ「スピード感」も重要な要素です。大抵のスロットマシンは1回のプレイに数秒もかからず、その間も小刻みに配当を与えてきます。このスピードでプレイを繰り返すと、脳は反射的に「もう少しで凄い報酬が手に入るのでは?」と思い始めてモチベーションが激しくアップ。「もう少し」が何度も積み重なった結果、最終的には数十時間をカジノで過ごすはめになります。

このようなスロットマシンの仕掛けから分かるのは、脳が最も強く反応するのは報酬そのものではなく「報酬の予感」だ、という事実です。

報酬の額が小さいよりは大きいほうがいいのは間違いないものの、それだけで脳は動かせません。「もう少し頑張れば…」や「あと少しで手に入る…」と思わせる「報酬の予感」に対してこそ、脳は最大のパワーを発揮するのです。

この特性は、原始時代に形づくられました。数百万年前の世界においては、何も考えずに目の前の報酬に飛びつける者こそが適応だったからです。

例えば、もし数十キロ先に獲物の大群がいたとしても、目の前に小動物が1匹いればそちらを先に狩るべきでしょう。そのせいで獲物の大群を取り逃がしたとしても、とりあえず1匹を確実に仕留めたほうが当座の飢えをしのげます。

そんな環境で進化した脳のなかには、「すぐ手に入りそうな報酬にこそ全力を出すべし」と指示を出すプログラムが備わりました。成果の種類には関わらず、とにかく「報酬の予感」にすばやく反応する無意識のシステムです。

つまり、最大のポイントは、「報酬の予感」を自己の管理下に置けるかどうかです。カジノやゲームのように他人の手で「報酬の予感」を操られるのではなく、あなたが脳のコントロール権を握るのです

そのための基本的な戦略はシンプルです。

  • 役に立つ「報酬の予感」を増やす
  • 役に立たない「報酬の予感」を減らす

あなたが決めたゴールの達成に役立たない報酬はできるだけ遠ざけ、目標に近づける報酬だけを取り込む。当たり前といえば当たり前ですが、この2つを愚直にこなすのが成功への道です。

今回の内容は以上になります。ご閲覧ありがとうございました。

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Takaブログ
ストレスによる体調不良をきっかけに、体調管理・ヘルスケア・心理学等に関しての情報収集及び実践を繰り返しながら、日常生活のパフォーマンス向上に努めるようになった。 このブログでは上記の内容を中心に「科学的根拠のある情報」を発信しています。