お疲れ様です。今回は「時間効率の追求が、むしろ時間不足を起こす!作業効率や生産性を求めすぎると逆効果」をお伝えします。
時間効率の追求が時間不足を起こしている
多くの社会心理学者は、「時間効率の過度な追求」が結果的に「時間がない」と感じる原因になっていると指摘しています。
短い時間で最高の成果を残そうとしたり、無駄なタスクを全て消そうとしたり、作業スピードの最適化を試みたりと、生産性にこだわる態度こそが問題の根源なのだというわけです。
時間の効率や無駄な作業を意識するのがなぜ悪いのか?そして、効率にこだわる態度がいかなる問題につながるのか?
効率性や生産性にこだわりすぎる人には、次のデメリットが存在します。
「人生はやるかやらないか」でメンタルが病む
ビジネス書の世界などでは、「人生はやるかやらないかだ」といったアドバイスをよく耳にします。だらだらと悩んで時間を費やすのではなく、とにかくスピーディに行動を起こして効率と生産性を高めることの大事さを訴えた言葉ですが、下手に実践すると、メンタルの悪化につながります。
一例として、アリゾナ州立大学などが、高学歴で裕福な学生の問題行動を扱ったレビュー論文を見てみましょう。
(PDFファイル)高学力学校の若者:メンタルヘルスへの課題とエビデンスに基づく介入の方向性 (researchgate.net)
ここで研究チームが調べたのは、裕福で頭が良い学生ほどメンタルを病み、ドラッグや酒に逃げ込むケースが多いのはなぜか、という問題です。
貧困にあえぐ若者に問題行動が多いことは昔から知られていましたが、近年では裕福で学歴が高い学生にも似たトラブルが増えてきました。
具体的には、優秀な学生ほどタバコやドラッグの使用率が高くて社会のルールを破り、教育水準が高い地域でもアルコールとマリファナの消費が多いとも報告されています。もちろん優秀な学生がみな問題を抱えているわけではありませんが、全米の基準と比較すれば、深刻な不適応を示す割合が大きいのは確かなようです。
裕福で学歴もある学生に問題が起きやすい理由を、研究チームはこう推測しています。
「『人生はやるかやらないかだ』という生き方が、いま世界中に広まっている。しかし、この考え方が個人と社会に及ぼす影響をもっと真剣に考えるべきだ」
目標に向かってすばやく行動を起こすのが悪いとは言わないものの、現代では「やるかやらないかだ」に代表される行動規範のプレッシャーが強く、メンタルを病んでしまう若者が多く見られます。効率と生産性の暗黒面であることは間違いないでしょう。
効率化の意識が生産性を下げてしまっている
効率や締め切りを強調する企業は、実は従業員の生産性が低い傾向があります。
ウィリス・タワーズワトソン社が行ったリサーチでは、日本を含む世界12ヵ国から22347人のビジネスパーソンを集め、それぞれの職場におけるプレッシャーレベルをチェック。このデータを全員の仕事ぶりと比べたところ、高い目標や生産性を重んじる上司のもとで働く者ほどストレスが多く、仕事のモチベーションは低く、病欠の確率が高く、生産性が下がる傾向が認められました。
このような現象が起きるのは、効率アップと締め切りの追求で、ストレスが慢性化するからです。いつも時間のプレッシャーにさらされ続ければ、本人が気づかずとも心身は慢性的に緊張を続け、ほどなく私たちの脳は負荷に耐えきれなくなります。その結果、最後には心身のバランスが崩れ、ネガティブな思考や睡眠障害、音や光への過敏さなどが起き、生産性の低下につながるのです。
生産性を上げれば上げるほど忙しくなる
組織心理学者のトニー・クラブは、生産性の追求がもたらす罠について、いかに生産性を上げようが、そのぶんだけやるべき作業の量も増えていき、あなたの忙しさは一向に改善しないという指摘をしています。
この言葉の正しさは複数のデータで認められており、たとえばリーダーシップIQ社が行った調査では、全米207社で働く従業員のエンゲージメントと業績評価データのマッチングを実施。その結果、全体の42%の組織において、生産性が高い人ほどエンゲージメントが低い事実をあきらかにしました。
つまり、仕事がたくさんできる人ほど作業のモチベーションが低く、自分が所属する組織にネガティブな感情を持ちやすかったのです。
ちなみに、もしあなたがハイパフォーマーでなかったとしても、似たような現象が起きる可能性はあります。
たとえば、あなたが1日にメッセージを送る量を増やせば、そのぶんだけ相手からの返信にリターンする義務は増えるでしょう。同じように、効率よく書類を仕上げればそのぶんだけ次の仕事は前倒しになりやすく、プレゼンの資料を読めば読むほど他にもチェックすべきデータの存在に気づくこともよくあるはずです。
仕事のプロセスが複雑化した現代では、作業に明確な終わりがないケースの方が多く、いかに作業の効率を高めてもタスクの総量が減らない方が一般的でしょう。
今回の内容は以上になります。ご閲覧ありがとうございました。